今月の叙序圓ギャラリーは鎌倉彫パネル『青いゼラニウム』です。
堀野さんの母であり鎌倉彫の師匠である孔翔先生の作で、以前紹介した『六山会で絵付けし合った作品群』の別の一つになります。特徴的なのは使用されている花の青色で、堀野さんの所属する藤孔会オリジナルの色漆の中でも特に人気のある色です。
漆は酵母であり、その特性から金属や鉱物を原料とする顔料が必要になるなど制約が多く、簡単に何色でもできるわけではありません。
伝統的な色は皆様ご存知の通り赤と黒で、赤は鉱物を利用した弁柄、黒は漆が鉄に反応して黒くなる現象を応用した物です。
この現象は古くから知られ、その見事な黒色がどんな染料より深いことから漆黒と言う形容詞が生まれました。
最近は色の種類も増えましたが、長期保管すると変色したり、シミになったりとなかなか扱いが難しいとのこと。
ちなみに厳密には『青いゼラニウム』は自然界には存在せず、それ故にアガサ・クリスティーの小説の題名にもなっています。
鎌倉彫は創作なので、自由で良いですよね。
【アーティスト紹介】
堀野 篤人
本業は機械設計技術者。伝統工芸鎌倉彫において教授会皆伝免許、押し花において日本ヴォーグ社のインストラクター免許を取得して、自然素材を用いた様々な芸術作品の創作に挑戦。海老名美術協会会員。
鎌倉彫は母である教授会師範の堀野孔翔に師事、その作風「構図を重視した絵画的図案に基づく木彫」の伝承を目指して雅号「研翔」を名乗る。
また押し花においては「押し花ノア」桐ケ谷恵美子先生に師事、花を育てる段階から一貫した作品作りを目指している。