今月の叙序圓ギャラリーでご紹介する作品は『オールリアル』。
本作はその名の通り全て本物のフルーツ使用した「果物の押し花による静物画」です。
押し花絵の世界では関係のない花を使って別のものを表すことが推奨されているので、果物を表現する場合も花弁などを用いることが多いのですが、本作ではあえて「実物の果実」にこだわり、絵画としての創造性より押し花師(プレッサー)としての技術を魅せることを目指した作品になります。
そのため、題材も難易度の高いとされるスイカやマスカット、平らになりにくいメロンなどを選んでいます。実は中でも圧巻なのがバナナで、作者自身これまでに聞いたことも見たこともありません。
作者も思い付きでバナナの押し絵に挑戦してみたそうですが、押そうとした瞬間から黒くなり始め、乾燥するまでに真っ黒になってしまうため、この3本を完成させるまでに、何十本試作したか分からないくらいそうです。
絵画も良いですが、本物の醸し出す独特の世界観をお楽しみ頂けたらと思います。
【アーティスト紹介】
堀野 篤人
本業は機械設計技術者。伝統工芸鎌倉彫において教授会皆伝免許、押し花において日本ヴォーグ社のインストラクター免許を取得して、自然素材を用いた様々な芸術作品の創作に挑戦。海老名美術協会会員。
鎌倉彫は母である教授会師範の堀野孔翔に師事、その作風「構図を重視した絵画的図案に基づく木彫」の伝承を目指して雅号「研翔」を名乗る。
また押し花においては「押し花ノア」桐ケ谷恵美子先生に師事、花を育てる段階から一貫した作品作りを目指している。