今回の叙序圓ギャラリーでご紹介する作品は、『花三様』。
こちらは堀野さんの少し前の鎌倉彫作品です。
鎌倉彫を習ってある程度彫れる様になると、誰しも展覧会などで発表するためにも次第に自分でデザインするようになります。
鎌倉彫は伝統的に彫りと塗りを別の人が担う分業方式を採ってきました。
先生方は彫りから塗りまで自分で行って芸術作品として仕上げる事も多いのですが、漆は『漆風呂』と呼ばれる専用の収納庫で乾燥させる必要があります。その『漆風呂』を効率良く稼働させるためにも塗師が彫師の注文で塗りを対応することが一般的です。
もちろん彫師はどういう作品を作るかを考える責任者ですから、塗りの特性も理解した上で、独自のデザインをすることも作品を完成させるための重要な技能になります。
実際にデザインからの製作を始めてみると、これがとても面白くて病み付きになります。
作者の堀野さん自身も、(さりげなく自分の技量を自慢するために)友達にプレゼントしようと思い立ち、余り値の張りすぎない姫鏡をたくさん作ったことがあるそうです。
プレゼントしてしまうと自分のデザインが手元に残らないことが寂しくなってきたので、解決策として気に入ったデザイン(ゆり、トルコ桔梗、ひまわり)を使って作ったのが本作とのこと。ご本人としては何となくまとまりのない構図と感じているそうです。
そのため、本作制作時から今まで、随分いろいろなデザインをしてご友人にプレゼントされていますが、本作品のデザインでパネルを作るのはやめられているとのこと。
本作品は、「あの頃は本当に一点一点を大事にしていたなあ」と、堀野さんに初心を思い出させてくれる一作だそうです。